反応時間0.24秒の攻防

反応時間0.24秒の攻防

大谷より2倍速い球と対峙!?
ピックルボールのノンボレーゾーンでの、ボレーの速度は平均時速48~64キロ(30~40マイル)だそうです。これを約2.1メートル(7フィート)ずつ、約4.2メートルの距離で打ち合うわけです。その反応時間は約0.24秒だそうです。
こう聞いてもピンとはきませんね。では、これならどうでしょう。
野球のピッチャーは時速160キロのボールを投げます。ピックルボールのボレーの約2.5倍の速度です。しかし、打者までの距離は18.44メートル。キッチン間の4.2メートルより4倍以上の距離があります。よって反応時間は約0.5秒あるそうです。
ピックルボールと野球の反応時間を比較してみてください。そう我々は、大谷より2倍速い球に対応しなければならないということになるのです。いかに時間がないか、わかってもらえるでしょうか?

テニスと比べても
テニス経験者の私も、穴開きボールのピックルボールでは、時間的な余裕は十分あるかと思っていましたが、実は意外にないのです。テニスでは、これほど近距離でボレーボレーすることは稀ですから。
ストロークでも同じです。
テニスのベースラインからベースラインまでの距離は約47メートル、ピックルボールは27メートル。テニスに比べ、およそ半分の距離になります。
一般的なプレーヤーが時速64キロのストロークを打ち合った場合、テニスなら約2秒の時間があるそうですが、ピックルボールなら、それがほぼ半分、1秒になります。
さらにその半分、約0.5秒の間に、相手のボールの方向、回転、バウンドなどを予測し、次の0.5秒の間にどこにどのようなボールを返球するのか判断を強いられるというわけです。
ベースライン上にいても、意外に時間がないということが分かってもらえるでしょうか?
距離が半分なら球速も2倍。プロのテニスプレーヤーが打つレベルの時速130キロ、ウイナー級のボールに対処し続けるということです。
では どうする?
昔、プロ野球に携わる仕事をしていた時、プロ野球の並みいるバッターがソフトボールの選手の100キロの速球に何度も腰砕けになって空振りする姿を見たことがあります。それほど、体感速度、体感時間というのは大事なものなのです。
人間の反応時間の限界は0.1秒、一般的なアスリートでも0.2~0.25秒。普通の人でも0.35~0.4秒だそうです。また、その反応速度は20歳前後から衰えていくことがわかっています。我々おじさんが若者に勝つには、別のアプローチが必要なようです。
チキンウィング攻撃
「チキンウィング攻撃」や「チキンアーム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 右利きの相手なら左胸の上部あたり。体正面のボールはバックハンドで構えるのが基本ですが、それでもこの位置は最もパドルを動かす必要があります。スピードボールを返すには「最難関」の場所と言い切っていいでしょう。そう相手に「鳥の羽」のような形をさせることから、この名前がついています。

こちらが先にボールをネットより高い位置に浮かせれば、反応速度で負けるようなスピードボールを打ってこられます。それに先んじて相手を「鳥の羽」のように仕向けるコントロールとテクニックが必要になるというわけです。
パドルの先を寝かすな
反応速度を極限まであげるために、「パドルの先を落としてはいけない」という教えもあります。
ただ時間が奪われれば奪われるほど、打った後に、スプリットステップを踏み、パドルの先を体正面のレディーポジションに構えるのは難しくなります。
特に相手の右腰、フォアハンドで取らざるをえない位置にボールを送ってみてください。そして相手のパドルの先が落ちているとなったら、それは相手がバランスを崩しかけている、チャンスの合図です。相手のボールが少しでも浮いていたら、積極的に「チキンウィング攻撃」を狙っていきましょう。
もちろん、相手の裏をかき、ダブルスのセンターや、遠いサイドを狙っていくのもありですが、反応勝負に勝つほど、気持ちの良いものはないですよね。
こちらも決してパドルの先を落としてはいけません。常にペースアップを狙っていくのではなく、緩急織り交ぜる老獪さで、若者の動体視力に対抗していきましょう。「コケコッコー」ならぬ「マイリマシタ」と鳴かせることができたら最高ですね(笑)。