ダブルス 左サイドか右サイドか②

ダブルス 左サイドか右サイドか②

前回、ダブルスの場合、あなたは右サイドか、左サイドか、どちらに入る方が向いているのかという話をしました。

その続きとして今回は、利き手やプレースタイル、性格以外に、「利き目」に関連した周辺視野も大事になってくるといった、少し面白い話です。
アメリカなどのピックルボール界隈で話題になった発端は、テニスの超有名コーチであるパトリック・ムラトグルー氏の、この動画からでした。
テニス界からの衝撃
セリーナ・ウィリアムズや大坂なおみら、数々のトッププレーヤーを指導してきた、彼は言います。「多くのコーチはこの大事な秘密を知らない」。そんな言葉から始まる、衝撃的な内容でした。
▶「Patrick Mouratoglou」動画より
興味がある方は、ぜひじっくり見てほしいです。ピックルボールやテニスをやる方以外にも超おすすめです。すべてのスポーツに当てはまる話だからです。
端的に動画の内容を明かすと、人間の目は3次元を認識するため、それぞれ利き目、非利き目があります。
非利き目は横にズラして見る性質があり、その視野は狭まります。
67%の人が右目が利き目だそうです。
その一方で、テニス界の2大レジェンド、ロジャー・フェデラーは右利きで左目が利き目、ラファエル・ナダルは左利きで右目が利き目とのこと。
利き手と利き目がクロスしている「交差利き」というのは、スポーツにおいて非常に有利だそうです。
2人の例を出されると、妙に納得してしまいますね。
あなたの利き目はどっち?
話の核心に迫る前に、まずはあなたの利き目を確認しましょう。手で三角形を作って、その中心に目標物をおいてください。ボールでもコインでも何でも構いません。
次に右目を閉じて目標物を見ます。目標物の位置は変わらず中央にありますか?

次に右目を閉じてください。あら不思議、目標物は消えてませんか?
おめでとうございます(笑)。あなたは67%側の多数派です。
これが逆に、左目で見えて右目で消える人は、左目が利き目ということです。

フェデラーが有利なこと
ムラトグルー氏の動画の話に戻ります。フェデラーは右利きで、目は左が利き目。それのどこが有利なのでしょうか?
フォア側にボールを振られたときを想像してください。
クロスステップで遠い球に、飛びついても左目は斜め前から来るボールを追い続け、キッチリ認識できますよね。一方、右目が利き目だと、この捻りすぎた体勢では、一瞬、視界からボールが消えてしまいます。
ですので、右目が利き目の人は、体をあまりひねりすぎない、セミオープンかオープンスタンスが適しているそうです。
逆に、フェデラーのように右利き、利き目が左目のプレーヤーは、体を大きくひねってもボールをしっかり認識できることから、強くて正確なフォアを打てる確率が格段に上がるそうです。
確かにフェデラーもナダルも、肩を大きくローテーションしてフォアを打っています。ボールをギリギリまで引き付けても、視野の中にボールは収まったままです。
サーブでも同じことが当てはまり、「交差利き」は体をしっかり捻っても、ボールのインパクトの瞬間が正確に見られるそうです。
そういえば、フェデラーがフォアのサイドラインより大きく外側に打たれたスマッシュを、背中からラケットを回すようにグランドスマッシュ。逆にエースを奪い返した伝説のシーンがありましたよね。
ナダルのボールを引き付けに引き付けて打つ、ポール回しにしても、
「交差利き」だからこそ、なし得る、超スーパーショットなのかもしれません。
右目利きはバックが有利
逆に左目が利き目だと、バック側は不利になるはずです。しかし、フェデラーはバックも天才的です。ムラトグルー氏いわく、体はあまりひねらず接触ポイントの幅自体は小さくなりますが、絶妙のタイミングで、その一点をとらえることと、巧みなリストワークで、強力なバックハンドも実現させているそうです。
私「ピックル坊や」は最も一般的な右利き、右目利き。バック側に強く捻っても視界が確保されるはずです。
ムラトグルー氏は、右目が利き目のプレーヤーはバックが強くなる可能性が高いと言ってます。
しかしながら、その言葉は、私には全く当てはまりません(どうなってるんだ? 笑)。
ピックルボールにも反響
ムラトグルー氏からの「秘密」を知ったピックルボール界でも、次のような動画があがっています。
右目が利き目の人は、ベースライン付近でドライブを打つ際、体を捻りすぎないよう、注意を促しています。
逆に左目が利き目の人はバックで体を捻りすぎると、ミスの可能性が高まるので、なるべく頭を動かさないことを意識するよう教えてくれています。
▶「Ed Ju」動画より
▶「Selkirk TV」動画より
ディンクに当てはめると
もう一歩踏み込んで、この「理論」をピックルボールのディンク合戦に当てはめるとどうなるのでしょう?
両目で認識できる範囲のほうが当然、正確に空間認識や距離を感じ取ることができます。
また利き目か非利き目かでいうと、脳は利き目からの情報を正しいと認識し、最初に伝達するそうです。
利き目側の方が反応速度が早くなるということです。

図は右目が利き目のプレーヤーが右に立ち、左目が利き目のプレーヤーが左に立った状況です。
視線はどうしてもセンター寄りになりますから、体の向きは当然、わずかにセンター側に向きます。
右目が利き目のプレーヤーはボールが打ち出されてくる相手ペアの両方が見えています。加えて自分のパートナーの動きも、視界に入っています。左目が利き目のプレーヤーも同じです。
最も距離が短く反応時間が短くなる真向かいからストレートに来るボールも、それぞれの利き目で見ることができます。

これを左目が利き目の人を右側、右目が利き目の人を左側にした場合を考えてみましょう。
互いのパートナーの動きを見るために、体を捻ると、右目利きのプレーヤーは左側に、左目利きのプレーヤーは右側に死角ができます。
ストレートからのボールに反応が遅れるというわけです。
最初の左利き目が左側、右利き目が右側なら、互いのパートナーを見ても、真向かいの相手からのストレートを十分に視界に入れたままでいられます。
このことから、同じ右利き同士でも、もし左目が利き目の方がいれば、そちらに左サイドに立ってもらうという考え方もある、という結論に至ります。
左が利き目は意外にいるかも
ちなみに日本人の場合、左利きである確率は9.5%(右利き88.5%、両利き2%)という統計があります。
左目が利き目である人の確率は30%強と、左利きの3倍以上いますから、もしかすると、あなたのそばにもいるかもしれません。1度、パートナーに聞いてみるのもいかがでしょうか?
もし両方が、統計上最も多い、右利き、右目利きだった場合でも大丈夫です。
左側に立つプレーヤーは、あまりセンター側に体を傾けようとせず、真正面を見るぐらいの意識で、ちょうどいいということですね。
余談ですが、私が野球記者だった時に聞いた話です。イチロー選手は左利きで右目利き目、落合博満選手は右目利きで右目利き目。イチロー選手がバッターボックスに入ってバットを水平に投手に向けていたのは、右目の利き目を意識して視界を合わすため、落合選手がオープン気味に構えていたのは、右目で対峙する投手を見るためだったそうです。
どのスポーツでも超一流は周辺視野もコントロールしているということですね。
反応時間が「命」のピックルボールです。ほんの少しのことですが、意識してみると、もしかすると、あなたにも劇的な変化が見られるかも知れませんよ!