ピックルボールのダブルス戦略

雁行陣は通用しない?

大阪から情報発信中、私「ピックル坊や」はテニスからピックルボールへの転向組です。ボレーよりはストロークに自信があり、テニスのダブルスでは片方がステイバックする雁行陣も度々使っていました。
ですが、ピックルボールではあまり見かけない陣形です。あまりに不利になる、その理由を明確にしてくれている動画がありました。
大きな隙間と的
▶「In2Pickle」動画より
2人の間に大きな隙間
赤のA、Bが次のような陣形になったとしましょう。
青から見ると2人の間に大きな隙間ができています。
少しでも甘い球なら、簡単にセンター狙いでウイナーを奪えるでしょう。

浮いた瞬間 前にいる人が狙われる
仮にAがドライブで対抗し、奮闘したとしましょう。それでも青のキッチン前にいるボレーヤーの方が圧倒的に有利です。大きな隙間があるので、Aにボールを集めることも、振り回すこともたやすいです。
何球かラリーを続ければ、青チームに、かなり高い確率で甘い球が来るでしょう。こうなれば、料理は簡単です。Bの体か足元を狙えば、ほぼ確実にポイントを奪えるでしょう。
パートナーがポーチするにしても、Bは青チームの格好の「的」になってしまいます。

テニスでも相手が雁行陣なら雁行陣で構いませんが、両方が前に詰めてきたら基本はダブルバックの形になります。
ピックルボールの場合は、よりシビアに、相手はいつ何時でもネットを取る機会を伺っています。コートが狭い分、相手が詰めたのに気づいたところで、それほど下がる時間は残っていません。ノーマンズランド(キッチンとベースラインの間)に取り残されるのが、オチでしょう。

Aがよほどのバンカーか、ボレーができないか、などの、かなり特殊な事情以外、
ピックルボールに雁行陣は通用しないと言い切っていいのではないでしょうか?

片方がネットに詰めれば、パートナーもネットへ。片方がサイドに動けば自分もセンターよりへ。
縦も横も、2人がユニットとして動くことが大事です。
あえて逆手に取る
ですが、同じ方の動画で、これを逆手に取る方法を紹介していました。実戦的でとても面白い発想だと感心させられました。
ミックスダブルスで女性パートナーが一方的に狙われているような状況になった際、
あえてノーマンズランドに自分がスルスルと入り込み「半分雁行陣」を作るという「作戦」です。
▶「In2Pickle」動画より
パートナーの女性がサーブの状況です。
通常ならベースライン上に2人で並ぶステイバックが基本です。
2バウンドルールにより、サーバー側はノーバウンドでは打てませんからね。

リターン側は当然、一見すると、このなぞの動きが気になるでしょう。
1度目は素直に女性側をターゲットにラリーしますが、それを見越した主人公の男性はノーマンズランドから一気にセンターのボールに飛びつき、見事にポーチを決めます。
2度目、相手は男性側にリターン。下がりながらライジング気味のワンバウンドで打った男性は、うまくサードショットドロップで切り抜け、ディンク勝負でポイントを奪います。
一方的にターゲットになっている女性を守るため、
あえて自分がオトリになり、ボールを自らの方に打たせるという戦略ですね。
誘い込む
こちらの動画でも、相手を戸惑わせたり、誘い込むという戦略を紹介しています。
▶「Pickleball Playbook」動画より
コースを限定する
ミックスダブルスのディンク合戦。男性プレーヤーは、いつでも手を出すぞと言わんばかりに、中央付近で細かいステップを踏んで、相手ペアを翻弄します。
ストレートが空いていると、相手が狙ってくると、それを見事にカウンターで攻撃します。
一般レベルのプレーヤーでも、通常、体の正面で構えるパドルを、あえてフォア側に向けてバックを狙わせたり、バックに構えておいて、センターに打たせたボールをカウンターするテクニックは十分に可能だと、解説してくれています。
パドルを常に一定の位置に構えたり、体をジッとしていると、相手は右腰や左肩の打ちにくいところを狙いやすくなります。
それを防ぐため、フェイントをかけ、相手を惑わさせるということですね。
リターン後あえてステイ
もう一つはリターンの際の戦略です。通常はキッチンにいち早くたどり着くのが基本です。しかし、あえて、それをしない場面を作ります。
相手からのサーブをドロップしますが、前に行くのが遅れたように見せかけます。一旦、ノーマンズランド付近に踏み入れた後、ベースラインに下がります。相手は当然、ボールを深く打つことを狙うでしょう。
相手がインパクトしようとした瞬間、一気に前に上がり、ダイレクトで、そのボールをとらえウイナーを狙います。リターンをネット際にうまく落とせていれば、相手は簡単には強いショットは打てません。
下から上に打ち出したボールなら、空中の高い位置でとらえ、一気に攻撃することは十分に可能です。
仮に失敗しても1度、この戦略を見せておけば、ドロップイコール、ディンク勝負が、当たり前と想定していた相手は、以降かなり考え込むことになるのではないでしょうか。
テニスで言えば、相手のショットがスライスなどの限定的な場面で、ワンテンポ遅れてネットをとる、「スニークイン」のような戦法ですね。
セオリーは絶対ではない
反応時間が勝負のピックルボールです。こちらの読み通りに相手のボールを誘い込めば、イッキにポイントを奪える可能性は高まります。
セオリーはセオリーとして存在しますが、それを逆利用するのも、意外性があり、時に効果的となる「戦略」です。
ボールを打たない間でも、勝負は、騙し合いは、もう始まっているのですね。
このあたりがピックルボールは戦略性に満ちていると言われる所以ではないでしょうか?
だからピックルボールは面白い!